2022/10/01 コラム
集中していると雑音が気にならないのはどうして?
何かに集中していると、周囲の雑音が気にならなくなることはありませんか?
大ホール最後方の座席にいて他の観客が目に飛び込んでくるにも関わらず、はるか遠方のアイドルからのウィンクに気づくなどのエピソードを聞く事もありますね。
私たちは多くの情報に囲まれており、外界からさまざまな感覚情報(五感、痛覚、皮膚感覚等)を受け止めて、外界に対する反応(例えば、声をかけられたら返事をする等)を起こして生活をしています。
しかし、ある情報のみに注意を向け、他の情報を遮断することも出来ます。これは何故なのでしょうか?
私達の脳には、「感覚情報の選別」という意味の「感覚ゲーティング」と呼ばれる働きをもっています。
これは感覚情報をふるいにかけるように選別して、不必要な感覚を意識にのぼらせないようにする働きです。
感覚ゲーティングには脳の様々な部位が関わって協調して働きますが、特にこの働きをする部位の一つに「視床」と呼ばれる場所があります。
ここで視床の特徴や働きについて見ていきましょう。
視床は、脳のほぼ中心の間脳と呼ばれる場所にある器官です。
嗅覚以外の感覚神経が通るため、匂い以外の全身の感覚を大脳皮質へ伝える重要な中継地点です。
駅で例えると、京阪神間の大阪駅のようなものでしょうか。
そのため、視床の近くで脳卒中が起きると感覚麻痺などの後遺症の原因になる事があり、実際、好発部位でもあります。
通常、目や耳、皮膚など全身からの感覚は感覚神経によって伝えられ、嗅覚以外は視床を通って大脳皮質で受け止められて感覚を認知します。
これによって「明るい」、「音が聞こえる」、「暑い」などの感覚情報を意識しています。
これまで視床は「感覚情報の中継地点・単なる通り道」と考えられてきましたが、視床に感覚情報を選別する働きを持つ事がわかってきました。
視床での感覚情報の選別の働きは、古くから「注視」などの視覚に関する研究では注目されていましたが、1984年にフランシス・クリックは「人間が注意を向ける時のメカニズム」を説明するものとして「サーチライト仮説」を発表しました。
現在も研究中の分野ですが、このしくみには大脳皮質と視床の間での感覚情報のやり取りを通じ、視床の一部である「視床網様核」という場所がこうした感覚の選別に働いている事がわかってきました。
以上のような重要な働きが脳には備わっていますが、疲れが溜まってくると働きが悪くなりますので、十分な栄養や睡眠・休息が大事になります。
現代は新聞・雑誌やTV、インターネットなど、情報発信手法が多岐に渡っており、フェイクニュースにも注意が必要な世の中です。
私達も視床のように、重要な情報を見極めて生活していきたいものですね。