減塩のすすめ

2023/10/01 コラム

減塩のすすめ

 少し前のお話ですが、都会の大きな中核病院から地方の穏やかな雰囲気に包まれた(でも冬は厳しい)病院へ赴任したときのことです。

都会の大病院と変わらず診察と併診する方法で、週に2回の外来栄養指導を行っていました。

大きく変わったことは、患者さんの血圧や食塩摂取に対する認識の穏やかさでした。

 

「ショクドイものはおいしいよ、先生」と言いながら、満面に笑みをたたえてこちらを見つめています。

「ショクドイはどこに行ったら買えるの??」と伺えば、その患者さんはお顔をくしゃくしゃにして、大笑いです。

「ショクドイもの」とは「塩(しお)くどいもの」のことで、くどいは濃い塩味を指していて「塩辛い」つまり、食塩がタップリ使われているという意味なのです。

 

 

高齢で血圧も高いために「減塩」が必要な患者さんです。

血液をろ過してキレイにする腎臓の糸球体という組織の数が、加齢や疾患によって減っていくことが高血圧の要因です。

正常な糸球体の数が減ると食塩の体外への排泄も悪くなり、食塩中のナトリウムという成分が体内に蓄積してしまいます。

この過剰なナトリウムの蓄積を解消するため、血圧を上げることによって、ろ過を促して排泄しています。

食塩摂取が多いと、代償的に夜間のナトリウム排泄量を増やすため、心臓や血管の負担も増えます。

正常な血圧で体外へ排泄できる程度の食塩量にすれば、からだに過剰な負担は掛かりません。

これが高血圧の治療に「減塩」が必要な理由です。

 

また、ナトリウムを体外へ排泄する際に、同じくカルシウムも排泄されてしまいます。

減塩によってカルシウムの排泄量が抑制されると、骨粗しょう症や骨折の予防に役立ちます。

 

 

 頭書の患者さんは、周囲に心筋梗塞や脳卒中に罹った方もなく、減塩で血圧をコントロールすると心臓や血管の障害を防げる・・・という説明に対して、あまり関心がなかったのです。

その一方で、塩辛いものを食べ過ぎると、夜トイレへ行く回数が増えますよ。

骨粗しょう症の予防には減塩を・・・という説明を行えば、患者さんの意識は大きく変わりました。

高齢者にとって骨折は最大の関心事であったのです。

 

尿の濃縮能の低下もあるためか、何度も夜間就寝中にトイレへ行くことから寝不足を実感していました。

夜間トイレに立つと転倒・骨折のリスクも増えます。

その翌週「先生に言われたとおり、ショクドイもんは食べんなら夜トイレに起きなかった。よく寝たよ」と、やはり満面に笑みをたたえて、ちょこんと腰掛けています。

 

高齢患者さんに対する減塩の動機づけはかなり苦労するのですが、働き盛りの患者さんとは異なる説明が効果を発揮しました。

高血圧の予防に、ふっかの健康食ラボHPのレシピ検索「減塩」を参考に実践して下さい。

 

レシピ|関西福祉科学大学が発信するレシピと栄養情報サイト - ふっかの健康食ラボラトリー (fukka-hf-labo.com)

https://www.fukka-hf-labo.com/

 

 

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