糖尿病の合併症である腎臓病でも栄養・食事療法は重要です。

2025/10/01 コラム

糖尿病の合併症である腎臓病でも栄養・食事療法は重要です。

糖尿病で血糖値のコントロールが悪い状態(高血糖)が続くと、組織のたんぱく質が糖化され、正常な機能を失います。

血管はたんぱく質で構成されていて、常に血液中の成分にさらされていますから、高血糖が続くと障害を受けやすいのです。

とくに全身の小さな血管が傷つきやすく、内側が狭くなって詰まったり、壊れたりするのです。

 

タイトルにある腎臓という臓器は、左右に1個、対をなしていて片側が120g~150gくらいでソラマメ状の形をしています。

ヒトの体重と比較すると非常に小さな臓器なのですが、じつは心臓から送り出された血液の20%以上が腎臓へ流入し、ろ過して体内の血液をキレイに保つ役割があります。

 

この血液のろ過には、腎臓の糸球体と呼ばれる組織にある細くて小さな血管が活躍しています。

糖尿病で何年も長期間にわたって高血糖が続くと、糸球体にある細くて小さな血管が障害されて腎臓の機能が低下していきます。

症状が出てしまう程に腎臓の機能が失われると、血液の浄化を人工透析に頼ることになります。

尿毒症による弊害を避けることが可能であり、体内の老廃物や余分な水分を取り除くだけではなく必要な成分を補うことも出来る安全な治療法ですが、拘束時間は長く日常生活は制限されます。

 

 

 

 

 

 

さて、糖尿病による高血糖で腎臓の機能が低下することは分りました。

それだけではなく様々な原因が想定されていて、高血圧もその要因であり大きく関係します。

また、食品に含まれるたんぱく質の摂り過ぎも影響を与えるのです。 糖尿病から腎臓の機能が低下していく「糖尿病(性)腎症」という慢性合併症を有した患者さんの栄養・食事療法に長期間携わり、多くの症例に接してきました。

 

当初は、末期的な糸球体硬化症へ至り、栄養・食事療法としては食品に含まれるたんぱく質を通常の半分以下に制限した「腎臓病食」へ、高血糖を抑制する「糖尿病食」の要素を加えた複雑な食事療法を必要とする患者さんが中心でした。

患者さんいわく、肉や魚がたべられない・・・おかずがない・・・という状況に陥ります。

現在は、治療用食品が数多く開発されており、そのように極端なことにはなりませんが治療用食品もメリットばかりではありません。

 

それから数年を経て末期腎症の患者さんが中心であったものから、進展予防を含む早期腎症の患者さんの割合が増えていき、長期の栄養・食事療法に伴う栄養障害など、新たなデメリットの克服が必要になりました。

糖尿病に関連した早期腎症の栄養・食事療法とMogensen分類1)の話題は改めて掲載させて頂くとして、糖尿食性腎症の予防に最も必要なことは血糖値の改善!である事実について記します。

 

1型糖尿病の患者さん8名に対して膵臓移植を実施して正常に近い血糖値へ改善した糖尿病(性)腎症を検討した海外の報告2)では、10年以上の長期間にわたって血糖コントロールを厳格に行えば、末期腎症への進行が抑制できることが示されました。

つまり、頭書の組織障害の進行を遅らせることができるのです。

当たり前の「血糖コントロールの重要性を再認識」させられ、糖尿病患者さんの教育入院プログラムなどへ大きく影響を与えました。

糖尿病治療の基本である栄養・食事療法が極めて重要なのです。

 

 

 

 

 

 

参考文献

1) NEJM. 311:89-83, 1984.

2) NEJM. 339:69-75, 1998.

 前のページに戻る

ログアウトしました。