2019/03/01 コラム
命は食にあり
飽食、グルメという言葉がよく使われる時代になり、食生活は様々な食べ物、色とりどりの加工食品に彩られ、豊かさを実感します。
しかし半面、食習慣の乱れや子どもの肥満、生活習慣病予備軍や食品ロスの増加などをみると、飽食時代の食のひずみも感じます。その反動もあってか、「食育」が大きく取りあげられるようになってきました。
「食育」の言葉が初めて使われたのは、明治31(1898)年に発行された石塚左玄著の『食物養生法』です。石塚は陸軍の軍医で、その後、食事で病気を治す「食医」として診療にあたり、健康の基本は食にありと説きました。
「嗚呼何ぞ学童を有する住民は殊に家訓を厳にして躰育智育才育は即ち食育なりと観念せざるや」
(『学童を養育する人々はその家訓を厳しくして、体育、智育、才育はすなわち食育にあると考えるべき』との意味)
石塚は、「命は食にあり」と家庭での食育の大切さを主張しています。また、日本人にあった食生活があると警鐘を鳴らし、「郷に入りては郷に随ふ食養法を実行すべきと」と地産地消の大切さも指摘しています。
平成17年に食育基本法が成立し、18年には食育推進基本計画が決定され、政府、国民が一体となって「食育」に取り組むようになりました。今から百年も昔の明治時代に生まれた食育の教えが、今の時代に再び脚光を浴びています。それは、食の大切さは不変ということにほかなりません。
生活リズムは三度の食事でつくられます。家族や仲間と一緒に食べることで会話が生まれ、食卓が楽しくなります。野菜や生き物の育ちを知ることで、作る人、食べ物への感謝の念が育ちます。料理作りやお手伝いを体験することで役立つことの喜びを知り、地域での食文化にも興味がわいてきます。
大人が子どもに食の大切さを気付かせる「食事五カ条」があります。
・ からだで感じるおいしい食事
・ みんなで一緒に楽しい食事
・ 育ちといのちを感じる感謝の食事
・ つくって楽しむみんなで食事
・ 過去から未来へと伝える食事
祖父母や親から伝えられた、目に見えないものは、子どもたちに伝えるべきではないでしょうか。