2020/03/01 コラム
アスリートの栄養・食事について
アスリートの競技力向上は、日々のトレーニングのたまものですが、食事からの適切な栄養摂取もまた重要であることは広く知られているところです。
現在、オリンピックに出場するようなトップアスリートの多くは、スポーツ栄養学の知見を有した管理栄養士などの専門家による栄養サポートを受けています。このようなアスリートに対する科学的なサポートは、実は戦前から実施されており、1932(昭和7)年に開催された第10回オリンピックロサンゼルス大会に出場した日本水泳チームに対する取り組みについて、下記の通り報告されています。
運動ニヨリ不足を來ス「ヴイタミン」Bノ補充ニハ野菜食ノ他ニ「オリザニン」錠を「レース」ノ十日前ヨリ毎食後三,四粒宛攝リ、且ツ決勝直前ニハ膿厚「オリザニン」0.3瓦ヲ各選手ニ服用セシメテ萬全ヲ期シタ。(中略)今後共之等食物ナドノ問題ハ大イニ研究シテ、出来ルダケ科学的ニ合理的ナ方法ニ依ツテ之ヲ供給シテ選手ノ「コンディション」ヲ良クシナケレバナラナイト思フ。
これは、「運動によって不足しやすいビタミンBの補充として、野菜の他にオリザニン錠(ビタミンB1)をレース10日前より毎食後3、4粒ずつ摂取し、且つレース直前には濃厚オリザニン0.3gを各選手に服用させて万全を期した。(中略)今後はこのような食物などの問題を大いに研究して、できるだけ科学的に合理的な方法によって食物を供給し、選手のコンディションを良くしなければならないと思う」と述べられており、アスリートの競技力向上やコンディショニングにとって、栄養・食事が重要であることを指摘しています。
時代は流れ、現在ではトップアスリートに限らず、ジュニア期のアスリートから運動愛好家まで幅広く栄養サポートが実施されています。その中には、ある特定の栄養成分の有効性を過度に推奨しているケースも見受けられます。しかしながら、アスリートの栄養・食事の基本は決して特別なものではなく、主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物をそろえたものです。日常の食卓にこれら5つが並んでいるか、今一度確認してみましょう。その上で、身体活動量や競技特性に合わせ、食事の量や内容を調整し、必要であれば不足する栄養素を補足する目的でサプリメントの使用を検討するのも良いでしょう。
(引用文献)
深山杲(1933)オリムピツク日本水泳チーム關スル醫事報告.日本學校衛生,21(8):580.