時間栄養学

2020/09/01 コラム

時間栄養学

私たちのからだでは、体温や血圧、ホルモンの分泌、代謝など、さまざまな生理機能が約24時間の周期で変化しています。

この周期性をつくり出している体内時計には、脳の視床下部視交叉上核にある「主時計(中枢時計)」と、肝臓や小腸、筋肉など、末梢の臓器の細胞にある「末梢時計」の二種類があります。

 

体内時計として大きな役割を果たしているのが、2017年にノーベル医学生理学賞が発見者に授与されたことで一躍有名になった「時計遺伝子」です。

一連の時計遺伝子からつくられるタンパク質の量が周期的に増減することによって、主な生体リズムが生じていることが明らかになったのです。

 

 

主時計における周期は24時間よりほんの少し長いため、毎朝、目から光の刺激を受けることによって時計をリセットし、体内のリズムを1日24時間の地球のリズム(≒社会のリズム)にあわせています。

一方、末梢時計は臓器や組織で個別にリズムを刻み、それぞれの臓器や組織のはたらきを調節しています。主時計とともに末梢時計が同調してはたらくことによって、私たちの生理的な周期性が形づくられているのです。

 

そして、最近、目で感じる光の刺激と同じように、食事のリズムが体内時計に大きな影響を及ぼしていることがわかってきました。

一例をあげれば、朝目覚めてから、朝食を数時間遅らせた場合、主時計のリズムはあまり変わりませんが、末梢時計のリズムに乱れが生じ、時計遺伝子の影響を受けやすい脂質の代謝に好ましくない変化が生じ得ると報告されています。

目覚めにあわせてきちんと朝食をとることによって体内時計が同調し、生理機能の適切な周期性が保たれると考えられます。

 

 

これまでも夜型の生活習慣や朝食の欠食は、肥満やメタボリックシンドロームなどの生活習慣病を引き起こしやすくするのではないかと言われてきました。

不規則な食生活によって生じる生理機能の周期性の乱れが、さまざまな体の不調につながっている可能性は否定できません。

健康のために「何をどれくらい食べるか」はもちろん重要ですが、体内時計を適切に機能させるために、「いつ食べるか」の視点も忘れないようにしたいですね。

 

 

 

【参考文献】

Shimizu H, et al. (2018) Delayed first active-phase meal, a breakfast-skipping model, led to increased body weight and shifted the circadian oscillation of the hepatic clock and lipid metabolism-related genes in rats fed a high-fat diet. PLoS ONE 13(10)

 前のページに戻る

ログアウトしました。