2021/01/01 コラム
体温の調節:魔法瓶のような人体
季節の変わりめは気温の変化があります。
昨今は夏のような酷暑から冬のような寒さへ急変する事もあり、その逆もあります。
このような時でも、実は人間の身体の体温は「一定の温度を保つ」という働きを見事に行っています。体温調節においては、まるで魔法瓶のような人体の仕組みですが、身体の中でどのような仕組みが働いているのでしょうか?
今回は、体温にまつわるお話をご紹介しましょう。
体温を一定に保ち調節する場所は、脳の奥深くにある「視床下部」と呼ばれる場所にあります。
視床下部が体温を調節する時には、外気温(皮膚からの温度)や体内の中心部の温度を照らし合わせ、寒い時には熱を作り(熱産生)、暑い時には熱を逃がす(熱放散)働きをして、体温を一定にしています。
食事の後に体温上昇を感じる事はありませんか?食事の30~40分後に、じっとしていても体温が上昇するメカニズムがあります。
これは「特異動的作用」または「食事誘発性熱産生」と呼ばれる現象で、食事により誘発される体温の熱産生現象を指します。
暑く感じる場合もあるかもしれません。
この熱産生は,食事中の栄養素が肝臓などで代謝(体内の化学反応)を受ける事で生じると考えられています。
このように身体が熱を作り出す時は、骨格筋や臓器で栄養素からエネルギーを産生して熱を作り出します。
寒冷環境で最も効果的な熱産生は「筋のふるえ」といわれ、体温調節のために起こる筋収縮で、生じたエネルギーはほとんど全て熱になります。
季節の変わりめでは、少しの寒さでも震えが生じる事もありますが、1〜2週間程も過ぎると、同じ気温でも震えなくなってきます。
これはどういう事でしょうか?
この現象についてもご紹介しましょう。
この時、どのような身体の変化が起きているかというと、「非ふるえ熱産生」と呼ばれるメカニズムで、「寒冷順応」が起こっています。
この働きは、主に「交感神経」と呼ばれる身体の活動や代謝を高める神経の働きによるもので、交感神経の働きを遮断すると、この「非ふるえ熱産生」の作用が消失するといわれます。
動物の例でいうと、寒冷に順応した動物では,非ふるえ熱産生の増加により,通常より基礎代謝(じっと安静にしても生じる代謝や熱産生)が2~3倍まで増える事もあります。
このしくみにより環境温度がかなり下がっても震えが生じなくなるといわれます。
他にも甲状腺ホルモンや副腎髄質ホルモンなどの内分泌系も働き、身体の体温を維持する基礎代謝を上昇させる事で、寒冷環境に対抗します。
人間の身体には、以上のような体温を一定に保つ様々な仕組みが備わっています。
これらの機能を十分に発揮しやすくするためには、生活リズムを保ち、エネルギーや栄養素を含む食事を十分摂り、身体のコンディションを最良に保てるよう心掛けましょう。