肺の生活習慣病(慢性閉塞性肺疾患)の話

2021/05/01 コラム

肺の生活習慣病(慢性閉塞性肺疾患)の話

慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)とは、タバコの煙を主とする有害な物質を長い間吸い続けることで気道や肺の細胞が壊れ、肺の機能が悪くなりスムーズに呼吸ができなくなる肺の病気で、喫煙習慣を背景に中高年に発症する生活習慣病です。

 

2001年に発表された大規模な疫学調査研究(NICEスタディ)の結果から40歳以上の約530万人、70歳以上の約210万人がCOPDに罹患していると推測されるにもかかわらず、2017年の厚生労働省患者調査によると、病院でCOPDと診断された患者数は22万人です。

つまり、多くの人々が、COPDであることに気づいていない、または正しく診断されていないことになります。

また、日本人のCOPD有病率は、喫煙者と喫煙経験のある人の方が非喫煙者よりも高く、高齢者になるほど高くなる傾向があることがわかっています。

厚生労働省の統計による2019年のCOPDによる死亡者数は17,836人で、男性は死因の第8位に位置づけられています。

 

2013年度より開始された健康日本21(第二次)のなかで、COPDは、がん、循環器疾患、糖尿病と並んで、対策を必要とする主要な生活習慣病として挙げられ、「COPDの知識の普及」が課題となり、2011年に25%であったCOPDの「認知率」を、2022年までの10年間に80%にするという目標が決められています。

COPDの認知率を上げることは,早くに患者をみつけ、そして、適切な治療・管理をすることにつながります。

 

 

治療の基本は禁煙であり、最も重要です。

 

そのほか、薬物治療(気管支拡張薬や抗炎症薬の吸入、去痰剤など)、運動療法(呼吸リハビリテーション)、栄養療法などを組み合わせることが大切です。

呼吸は呼吸筋を動かしていますが、COPDでは悪くなってしまった肺をカバーするために呼吸筋を一生懸命動かそうとするので、健康な人より呼吸にたくさんのエネルギーが必要となります。

ところが、多くの方は息切れによって食欲が落ちてしまうため、必要なエネルギーがとりにくくなり、その結果ますます体力や筋力が落ちて、息切れが強くなるという悪循環に陥りやすいです。

そのため、やせ型の人が多く、十分な栄養補給が必要になります。

 

 

COPDは呼吸器疾患であり、消化管自体には特に問題がないことが多く、まずは食事内容などを工夫して、効率的にエネルギー摂取することが重要になります。

一度にたくさんの食事を食べることが難しいため、1回の食事量を減らし、分食あるいは間食をする、特にケーキなどの洋菓子、アイスクリーム、チーズ、ピーナツバターといった若い女性がダイエットの天敵と考えるものを食べるのが良いとよいとされています。

 

 

 

食事のとり方の工夫については以下のとおりですので参考にして下さい。

①1回の食事を減らし、食事の回数を増やす

  主食、主菜、副菜などをバランスよくしっかりと食べる。

  一度に多く食べられない場合は、食事を3回ではなく、4~5回に分けて、間食をこまめにとるようする。

②油で効率よくエネルギーをとる

  脂質は少量で多くのエネルギーをとることができます。

  炒め物や揚げ物でなどで油を使う。

  乳製品やナッツ類などを利用するなど効率の良いとり方をする。

③良質のたんぱく質をとる

   筋肉の減少を防ぐために、魚、肉、大豆・大豆製品、卵、牛乳・乳製品などの良質のたんぱく質を毎日とる。

④炭酸飲料、イモ類は避ける

   ガスがおなかにたまると食欲が低下し、横隔膜も圧迫されて呼吸が苦しくなります。

⑤塩分の取り過ぎに注意

   COPDは、高血圧や動脈硬化など循環器系の病気も合併しやすいので減塩を心がける。

⑥抗酸化ビタミンやカルシウムをとる

   風邪などの感染予防にビタミンCやビタミンE、COPDに共存することが多い骨粗鬆症予防のためにカルシウムも積極的にとる。

 

 

 

 

 

 

 

【 参考文献】

・COPD診断と治療のためのガイドライン2018, 発行:一般財団法人日本呼吸器学会

・COPDを予防し負けない食生活へ 増進のしおり2013-2, 発行:日本栄養士会

・COPD 患者さまのための栄養のはなし, 発行:TERUMO

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