2018/08/01 コラム
味物質は胃腸も感じているってご存知ですか?
食べ物は胃や腸などの消化器系に運ばれます。胃腸は第二の脳ともいわれる程様々な働きがあり、緊張やストレスにも反応しますが、最近、胃腸に味物質を感じるしくみがある事も分かってきました。
味覚は5基本味(甘味、苦味、酸味、塩味、うま味)に分けられ、これらに対応する化学物質(味物質)から生じます。例えば、甘味の味物質にはショ糖等の糖類などが挙げられます。それぞれの味物質が、舌の味細胞にある味覚受容体と結合すると、神経が興奮し大脳皮質の味覚野に興奮が伝わる事で、私達は味覚を感じます。味覚受容体は舌表面に特に多く存在しますが、近年、味覚受容体が胃腸の活動にも関わる可能性が示され、うま味の味物質として代表的なグルタミン酸に対するうま味受容体が胃腸にもある事が発見されました。胃腸のうま味受容体にグルタミン酸が結合すると、胃酸や消化酵素の分泌が促進され、消化が進みやすくなることが分かりました(文献1)。更に胃腸での他の味覚受容体(甘味や苦味など)の存在やそれらのホルモン分泌や神経などへの関わりが示唆され、現在、様々な研究グループにより解析が取り組まれております(文献1、2)。
胃腸における味覚受容体の役割の詳細は更なる研究の進展を待つ必要がありますが、今後の解明が期待されます。
文献
1. 化学と生物 53 (7) : 432-441, 2015.
2. G.I.Research 19(3): 231-239, 2011.