2021/08/01 コラム
大阪の伝統の食③ なにわの伝統野菜「毛馬キュウリ」
毛馬(けま)キュウリは、大阪市都島区毛馬町が起源とされる なにわの伝統野菜です。
長さは約30cm、太さは約3cmと細長く、果頂部より2/3は淡緑白色、残り1/3は緑色で、黒イボ系品種です。
キュウリの原産地はヒマラヤ山麓にあるとされ、日本には奈良時代に渡来していたと考えられています。
江戸時代に大阪市都島区毛馬町ではキュウリが栽培され、他地域でつくられたものと区別するため「毛馬キュウリ」と呼ばれるようになりました。
明治末期ごろから現在主流の白イボ種が普及すると、毛馬キュウリの生産量は減少し、昭和10年代には生産されることがなくなる一方で、交配種の親として活用されました。
平成10年に大阪府農林技術センター(当時)によって品種として復活し、大阪なにわ伝統野菜の一つとして種子の増殖や栽培が広がっています。
現在の主な産地は河南町や、南河内地域、堺市です。
毛馬キュウリは、果肉の水分が少ないため歯切れがよく、肩部に独特の苦味があるのが特徴で、主に奈良漬の原料として使用されてきました。
また浅漬けや糠漬けにしてもパリッとした食感を楽しむことができます。
大阪の三大夏祭りの一つ、天神祭には、キュウリの酢の物が欠かせないそうで、かまぼこ用に実をとった後の皮を焼いて刻んだ鱧の皮や、たこ、ちりめんじゃこ等が加えられます。
地域によっては「キュウリのザクザク」ともいわれ、ザクザクとはキュウリを切るときの音とも、かじったときの音ともいわれます。
毛馬キュウリを使うととくに歯切れよく食べられます。
毛馬キュウリは1株あたりの着果が少なく、まっすぐに伸びるものが少ないため、あまり出回りませんが、道の駅などで販売されているようです。見つけたら食べてみたいですね。
【引用文献】
1)都島区役所総務課(政策企画),なにわの伝統野菜「毛馬キュウリ」ものがたり
2)森下正博,2001,大阪在来‘毛馬’キュウリの来歴と品種特性
3)大阪農技セ研報,37,27-34,奈良国立文化財研究所,1990
4)平城宮発掘調査出土木簡概報,22:11
5)JA大阪中央会
6)伝え継ぐ日本の家庭料理,魚,大阪府「はもの皮ときゅうりの酢の物」,協力:狩野敦,著作委員:山本悦子,p.53